えせエッセイスペシャル『甘いお誘い』その1


<予期せぬ電話>
火曜の夜、家に帰ってから遅めの夕食をとっていたら突然電話。
家にいる時間が短いのと、私あてにかかってくる電話が非常に少ないせいで
私が家の電話を1回目に取ることは99%ありません。
そのときはたまたま家族は全員就寝か入浴。偶然が重なって
私が電話を取らなければいけない状況に。

仕方なく電話を取ってみると

若い女性の声で(明るくハキハキした声)
「悠木さんの○○高校時代のクラスメイトの佐藤(仮名)です。」と名乗りました。
「本人ですが」と応えると会話開始。
「覚えていますか?」と聞かれ
「う〜ん…」としばらく唸る。

私は○○高校出身です。でも、佐藤さんはいたようないなかったような…
というか高校時代は女の子と話したことはほとんどありません。
親しかった子はむろん皆無。当然、佐藤さんとは全然接点はありませんでした。
一言も話したこともないかも知れません。その程度。
佐藤さんは私と同じでおとなしい子で(悪く言えば暗い子)普段から会話自体
それほどしていなかったような気がします。
しかし電話の声は似ても似つかない声。変われば変わるもんだなぁと思っていたら。
(↑この時点で気づけよ!)

「うわー久しぶりだねぇ〜元気だった?」とか言うので
てっきり、クラス会とかの連絡かなぁと思って普通に会話していると
就職の経緯とかを聞いてくるのでひたすら応える。そのあともフレンドリーな会話を
しばらく続ける。

昔の彼女とかならわかりますが、ほとんど話したこともないただのクラスメイトが
卒業してから5年ぶりに突然自宅に電話してくるのはどう考えても変です。
今まで一度も電話をかけてきたこともないクセにです。

「クラス会とかした?」とか聞かれたので
「してないし行ってない」と応えると
「私も全然出てないんだ アハハ」とか……

内心「え”これってクラス会の連絡じゃないの?」と思いつつ続行。

そもそも引っ越したことを高校に伝えていなかったような気がする。
それなのにこの人はなんで私の自宅の電話番号知ってるんだ?
疑問符がたくさん浮かぶけど、相手がひたすら聞いてくるのであまり深く考える暇なし。

「私もクラスの人と全然会ってないんだ」とか
「この前学校に行って来たんだけど昔と全然変わってたよ」とか言われたり
私は卒業してから一度も学校の近くに行っていないのであーそうなんだとしか言えない。
就職の経緯とかも聞かれたので、プログラマーまがいのことをしていると言ったら
「すっごーい」とか言われたり。
就業時間とか、土日は休日なのかとか気がつけばいろいろなことを根ほり葉ほり聞かれました。

ふとなんかおかしいな?と気づきました。
相手は自分自身のことを全然しゃべらないんです。こっちのことを聞く一方。
用件も言わないし雑談するだけに電話をかけてくるのもおかしい。
彼女は自分の詳しいことは一切話さないし、しかも彼女の話には「○○高校」と
「私の名前」と「彼女の名前」以外に固有名詞がまったくなし。



不信感がかなり高まったところで、ついにおきまりのセリフを言われました
「会いたいんだけど」

え”ーーーーーーーーーーーーーーー
↑心の声
警戒警報発令。

これは勧誘だ、勧誘に違いない。

佐藤さん(仮称)の電話の不自然な言動や状況をまとめてみると
・私は佐藤さん(仮称)を覚えていない。(話したこともほとんどない)
・5年ぶりに突然電話をかけてくる。(今まで一度も佐藤さんが電話をかけてきたことはない)
・昔の佐藤さんと全く違う性格。
・電話番号を知っているはずがない。(卒業後に引っ越ししたため学校にも伝えていない)
・佐藤さんは固有名詞をほとんど使わない。(佐藤さん本人の名前、学校名、私の名前のみ)
・特に理由もなく会いたいと言われる。(なぜだ?)


先に言っておきますが、私は勧誘の天敵のような存在です。
「○○のお誘いの電話を差し上げたのですが…」と言われたら
「興味ありませんから」で瞬殺。
勧誘だとわかった瞬間切るようにしています。
無駄な時間がとられるのがもったいない。
電話というもの自体、相手の都合を全く考えない不躾なシロモノとみなしています。
知らない相手に突然電話をかける、他人の家に断りもなく土足で踏み込むことに
似ていると考えています。昔からそれぐらい電話の勧誘を忌み嫌っています。
だからすぐ切る。相手にも無駄な時間をとらせないためには平和で有効な手段です。
でも一度だけ話も聞かずに速攻で切ったとき
「なんで切るんですかぁ!
 話も聞かずに興味がないってなんでわかるんですかぁ!」

って怒ってもう一度かかってきたときはちょっと怖かったなぁ。
ほんのちょっと話聞いて、同じように切ったらさすがにもうかかってきませんでしたけど。


脱線したので話を戻します。
すっかり勧誘撃退モードになった私は、今までのフレンドリーさから一転
敵意たっぷりの口調に変えて
「行かなければいけない理由がない」
「用件がわからないといけない」
「今まで接点もなかったし、会う必要性もない」
「突然電話してきて会いたいと言うほうが不自然じゃないですか」
とかいってもまるで動じず。

「今言えないような用件なんですか?」と聞くと
「会って話したいことがいろいろあるし」とか
いろいろってなんじゃ〜!
今言えすぐ言え。言えないなら斬る!いや切る。

「僕なんかよりもっと親しい友達がいたでしょう」って聞いたら
「悠木さんと会いたいの」みたいなことも言われたり。
こんな言葉に舞い上がるほど、私はうぬぼれが強くありません。
あまりにも不自然なので逆に冷静になってきました。

「1時間だけで良いんだけど」
そんな時間はもったいない。

「そっちの方に行ってもいいけど」
いや来なくて良い。


「勧誘とかじゃないから」
いやそうに決まってる。


「モノを売ったりそういうんじゃないから」
いや嘘だ。


ぬぐいされない不信感

それでも食い下がる。相手はプロだ。
これほどの強敵は初めてだ。

丁重に断ることが不可能とわかったので会話の途中だったけど
「忙しいので」って言って無理矢理切りました
勝ったというよりどうにか逃げ延びたと言うべきか。
結局14分ほど会話してしまった。

怖い怖すぎる。ストーカーですか?最後まで名前を偽っていた。
途中まで本人かと思ってた。電話切ってからも実はあれは本当の佐藤さん
だったんじゃないかとか何度も疑ったりしたし。だから余計怖い、ゾッとする体験。
でもあの人が本当の佐藤さんだったとしても絶対に行かなかったけどね。
私のように強引に電話を切ることができるのは少数派でしょうから
多少気の弱い人なら断り切れずにそこへ行ってしまったでしょう。
それにしてもあそこまでしつこいのは初めて。

一度も行ったことはないないので推測にしか過ぎませんが、この手の
「電話で用件を言えないような勧誘」は目的地に行ったら言葉巧みになにか高額商品を
買わされたり、新興宗教に引きずり込まれるような気がします。(私の妄想だといいのですが)

女の子と話すのは良いけど、変な宗教に引きずりこまれたり
欲しくないモノを無理矢理買わされるのはまっぴらごめんです。


最近の勧誘は巧妙になってきていて、△△会社の××と言うものですがと言うと
すぐに切られてしまうため、高校のOBのだれそれとか、クラスメイトのだれそれとか
名前を偽って友人や知人のフリをしてどうにか本人と会話しようと躍起になってる
みたいです。

実家に住んでいる相手だとたいてい家族が出るため、友人や知人になりすまし
本人と代わった瞬間に本性を現す。というのはよくあるパターンですが、
今回の場合はたまたま私本人が電話に出てしまい、言い訳ができなくなったので
そのまましらを切り通す作戦にでたもよう。
恐ろしや〜。
しつこい勧誘には気を付けましょうね。そして断固断りましょう。
特に用件を言わないでとにかく「会いたい」というのは危険です。
絶対に行ってはいけませんよ。
2000年10月19日の日記より


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